【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

面白い種はいっぱい転がっているから,気がついたらおやりなさい東京工業大学 辻内 順平

聞き手:受賞までの経緯をお教えください。

辻内:2011年ごろと記憶していますが, 旧知のH. John Caulfield(Fisk University, テネシー州)から「あなたをEmmett N. Leith Medalの候補者に推薦したいので資料を送ってほしい」とメールで言ってきました。それで総計140編ほどの論文リストを送付しました。その返事に「今年は非常に有力な候補があるようだから,1年待って来年推薦したいから待ってほしい」と言われました。
 翌年になり,Caulfieldから推薦するとの連絡がありましたので結果を待っていましたところ,残念なことに彼は膵臓癌で急逝したというニュースを聞きました。私は多分推薦の手続きを済ませた後で亡くなったと思っていましたが,確認の方法がありませんでした。
 その後OSAから全く連絡が無いので,これはもう落選だと思ってあきらめていました。
 ところが,OSAの規定では候補者がその年の選考から漏れても翌年に繰り越し,新たな候補者を加えて再選考を行うことを3年間繰り返すことが分かり,最近審査員を経験したことのある人から最近の候補者に私の名前が入っていなかったことが分かりました。それなら新しく候補者として推薦したほうが良いということになりました。
 再度の推薦には,スタンフォード大学のJ. W. Goodman名誉教授が引き受けてくださいました。この件に関しましては,かねてから親交のある谷田貝豊彦宇都宮大学名誉教授,武田光夫電気通信大学名誉教授(共に宇都宮大学オプティクス教育研究センター教授),清原元輔氏(清原光学会長)の諸氏からいろいろな助言をいただきました。
 Goodmanとは昔から親交があり,私の光情報処理や画像復元の研究を高く評価してくれていましたので,引き受けていただいたときは大変うれしく思いました。そこで先にCaulfieldに送ったのと同じ資料を送りました。その後,Goodmanは丁寧な推薦状を添え,OSAに提出されたこと聞きました。これだけの準備をした推薦であったため,多分大丈夫だろうと思い高をくくっていたら,落選したという知らせがありました。さて,これは困ったと思いましたが,後から資料を補強しても構わないというので,研究資料を再検討し,コメントを修正して,再度送りました。今度落選したらもう駄目だろうと思っていました。
 そして2017年2月11日の朝になりました。その日のことをよく覚えています。私は寝ていて気がつかなかったのですが,夜中の12時半ごろに私のコンピューターが,メールを受信していました。それはOSAの会長からのメールで,「2017年Emmett N. Leith Medalの受賞者にあなたが選ばれました」との内容でした。それがこれ(写真1)です。この手紙は後で郵送されたものですが,これと全く同じメールが送られて来ました。


写真1 OSAから辻内先生に届いた受賞決定を知らせる手紙



聞き手:メールだけでなく,同じ内容の手紙も届くのですね。

辻内:そうなのです。
 実は,私がOSAからこのような賞をいただくのは2度目になります。前回は1997年10月のことで,OSAから手紙だけがDHLで届きました。その時は私が候補になっていることを全く知りませんでしたので,手紙を見てびっくりしました。実はその年の2月に妻を肝臓癌で亡くし,ふさぎ込んでいた時でしたので,とてもうれしかったのを覚えています。
 その年のOSA年会はロングビーチで開催され,授賞式もそこで行われました。ちょうどうまい具合に,弟夫婦と一緒に西海岸へ旅行しようと計画をしていたので,「ちょうどいいから,旅行の時期をそれに間に合うように決めよう」と提案し,一緒に出掛けました。われわれはロサンゼルスに泊まりましたが,私は一人でそこからロングビーチまでタクシーで行って受賞しました。
 今回は,ワシントンD.C.で開催されるOSAの年会で授賞式が行われるそうです。さらに授賞式は,新しく学会のフェローに選ばれた会員の表彰式と同時に開催されることになっています。詳しいことはまだ分かりませんが,どんな方法でやるのか楽しみにしています。

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辻内 順平

辻内 順平(つじうち・じゅんぺい)

1951年3月 東京大学理学部天文学科卒業 1951年4月 通産省機械試験所研究員 1958年9月 Institut d'Optique(Paris)留学 1959年9月 CNRS(Centre National de la Recherche Scientifique)研究員 Institut d'Optique勤務 1959年9月 機械試験所 休職 1960年5月 帰国・旧職複帰 1962年3月 工学博士(東京大学) 1968年4月 東京工業大学教授(工学部) 1988年3月 東京工業大学定年退官 1988年4月 東京工業大学名誉教授 現在に至る 1988年4月 千葉大学教授(工学部) 1993年3月 千葉大学定年退官
●研究分野
応用光学(光情報処理・ホログラフィー・光学計測)
●主な活動・受賞歴等
1981年9月 ICO(International Commission for Optics) 会長(84年8月まで) 1988年4月 応用物理学会会長(1990年3月まで) 1995年7月 日本医用画像工学会会長(2004年6月まで) 1996年 名誉博士(INAOE,メキシコ) 1972年 OSA(USA)フェロー 1990年 SPIE(USA)フェロー 1990年 Institute of Physics(UK)フェロー 1962年 光学論文賞(応用物理学会) 1981年 技術賞(日本写真学会) 1987年 会長特別賞(SPIE,USA), J. Petzval賞( ハンガリー) 1997年 C.E.K. Mees Medal(OSA,USA) 2004年 藍綬褒章 2011年 業績賞(応用物理学会) 2017年 Emmett N. Leith Medal(OSA,USA)

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