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自分で流れを作り出すことに取り組む勇気を持ってほしい東京大学 荒川 泰彦

ICO-24は,この夏,東京で開催

聞き手:荒川先生はICO会長としてご活躍されています。今年は総会とICO-24といった大きな会議が控えていますが,これまでの手応えや,会議に対する期待をお聞かせください。

荒川:ICO(International Commission for Optics)は,1947年に設立された光の学術分野における学術連合組織であります。私は2014年サンチアゴ・デ・コンポステーラでのICO総会(General Assembly)で任期3年の会長に選出されました。その前は,副会長を6年間務めていました。ICOは,53国の国別(地域別)委員会と7つの学会(含OSAやSPIE)から成り立っています。普通の学会のような個人会員はいません。
 2015年は国際連合とユネスコが定めた国際光年でしたが,世界的に光の科学と技術の啓蒙がいろいろな形で広く行われました。国際年は,他の学術分野でも数多く制定されていますが,国際光年は特に活発に世界中で活動が推進されたため,最も成功した国際年だったという評価をユネスコは下しているようです。
 国際光年については,2016年以降どうするかという議論がいろいろありましたが,今後は国際光デー(International Day of Light)を制定することにより,その精神が継承されることになりました。「年」ですとその1年しかありませんが,「デー」ですと毎年活動できますので,持続性があります。2018年以降,5月16日が国際デーになります。なぜ,この日になったかというと,メイマンがレーザー発振に成功した日とされているからです。
 日本学術会議の中には,わが国のICO対応の代表組織として,ICO分科会が設置されています。国際光デーについては,このICO分科会が,国際光年に際して発足した国際光年協議会と連携して,わが国における活動を推進します。これにより,今後も継続して光の科学技術がさらにプロモートしていきたいと考えています。
 この8月21日から25日まで,東京京王プラザホテルにおいて,日本学術会議とICOの共同主催により,第24回ICO国際会議(ICO24)を開催します。日本での開催は30年前に札幌で開催されて以来,2回目です。久しぶりの日本開催は,わが国の光学やフォトニクス関係者にとっても,大変意義深いことです。
 ICO-24の開会式は,現時点では詳細は申し上げられませんが,わが国の光関連分野の国際会議として,極めて記念的なイベントとなると確信していますので,できるだけ多くの方々に出席いただきたいと思っています。新宿という都心での開催であり,オリンピックを控えた東京に相応しい会議にしたいと考えています。なお,開会式では,小池百合子東京都知事にも祝辞を述べていただく予定です。
 会期中にGeneral Assemblyが2回に分けて開催されます。General Assemblyには,各国からの代表団が集結し,次期会長選挙をはじめ多くの重要な議題の審議・決議が行われる予定です。
 今回, 特に大きな議題としてUnionへの組織改編があります。ICOは,現在はCommissionであり,IUPAP(International Union for Pure and Applied Physics:国際物理学連合)のAffiliated memberとして独立の活動をしています。しかし,光の科学と技術の活動は,既存の物理学の範疇を超えて幅広く展開がなされて,実質Union的な展開を進めています。その実態を反映させるために,正式にUnionになることを目指して,この3年間ICOは準備をしてきています。新たな名称はInternational Union for Optics and Photonicsとなる予定です。東京でのGeneral Assemblyで最終的に決議されますと,その後台北で行われるICSU(International Council for Science:国際科学会議)のGeneral Assemblyで決定が下ることになります。しかし,利害関係などやや狭い見地から反対をする組織もありますので,私の任期中にUnionへの移行が成功する確率は決して高いわけではなく,予断を許さない状況にあります。
 光の科学と技術は多くの分野に横断的に関わっています。単に一つの縦割りの学術の区分に閉じこもるのではなく,横に広がった発展的学術分野とするためには,Unionになることは重要です。
 ICO-24について繰り返し申し上げますが,お時間が合えば皆さんもぜひお越しください。特に,開会式は,出席者にとって,極めて思い出深い行事となることを保証します。



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荒川 泰彦

荒川 泰彦(あらかわ・やすひこ)

1975年 東京大学工学部電子工学科卒業 1980年 東京大学工学系研究科電気工学専門課程修了 工学博士 1980年 東京大学生産技術研究所講師 1981年 東京大学生産技術研究所助教授 1984年から1986年 カリフォルニア工科大学客員研究員 1993年 東京大学生産技術研究所教授 1999年 東京大学先端科学技術研究センター教授(2008年まで) 2006年 東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長 2008年 21・22期日本学術会議会員 2012年 東京大学生産技術研究所・光電子融合研究センター長
●主な受賞
1991年 電子情報通信学会業績賞 1993年 服部報公賞 2002年 Quantum Devices賞 2004年 江崎玲於奈賞 2004年 IEEE/LEOS William Streifer賞 2007年 藤原賞 2007年 産学官連携功労者 内閣総理大臣賞 2009年 IEEE David Sarnoff賞 2009年 紫綬褒章 2010年 C&C賞 2011年 Heinrich Welker賞 2011年 Nick Holonyak,Jr.賞 2012年 応用物理学会化合物半導体エレクトロニクス業績賞(赤崎勇賞) 2014年 応用物理学会業績賞 2017年 日本学士院賞

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