【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

あとから見ると無駄な計算でも その答えから「ああそうか」と思うことがある宇都宮大学 オプティクス教育研究センター 特任教授 一般社団法人 日本光学会 会長 黒田 和男

3月8日は「光の日」

聞き手:3月8日に日本光学会など4団体の主催で「第1回『光の日』合同シンポジウム」が開催されます。

黒田:学術振興会の中に光エレクトロニクス130委員会というものがあります。以前は光と電波の境界領域130委員会でした。レーザーが出た直後ぐらいにつくられた歴史のある委員会なのです。
 その委員会で10年ほど前なのですが,当時の委員長だった小林駿介先生が3月8日を,光速の3×10の8乗という語呂合わせから光の日にしようと提案されたのです。それで10年ほど前から130委員会の1つのイベントとして3月8日に開催していました。
 130委員会そのものはクローズドの委員会なのですが,昨年の3月8日のイベントはオープンで開催されました。その時に今後は全日本的な光のイベントにしていきたいとの相談があり,日本光学会,応用物理学会フォトニクス分科会,レーザー学会,この3つの学会と,130委員会の4つが共同主催として「第1回『光の日』合同シンポジウム」というイベントを開催することになりました。
 全日本ということで,非常にたくさんの光関係の学会などに協賛をお願いしました。50ぐらいの学会や団体に協賛を依頼してOKをいただき広がりのあるイベントになることを期待しています。
 ゆくゆくは3月8日を光の日として登録して世間一般に認知してもらおうとも動き出しています。

光は非常に応用範囲が広く,決して廃れない分野

聞き手:最後に光学分野の若手技術者や学生などに向けて光学分野の面白やメッセージをお願いします。

黒田:基本的には,若い人には自分が楽しい,面白いと思ったことをやってもらえればと。それがたまたま光であればいいのですが,どの分野でもいいから興味を持った分野をやってほしいなと思います。
 光学は元来,人間がものを見るという,目の機能から来ています。カメラとか望遠鏡,顕微鏡というのは,人間がものを見るという,その機能をより強化補助するという,そういった視点で出てきていますから。
 情報収集の一手段として,あるいは情報の伝達の手段として,光に勝るものはありません。要するに光学は人間が外界とコミュニケートしていくとか,そういう時の一番基本となる「ものを見る」というアクションに根付いた科学技術分野であるといえます。
 突き詰めると,結局光は情報を運んでいるのです。そう考えると非常に応用範囲が広く,決して廃れない分野ではないかと思います。
 それから情報を運ぶのと同時にエネルギーも運んでいます。光のエネルギーというのは微々たるもののように見えても,実は地球が太陽から受けている光のエネルギーを考えて見ればその大きさ,重要さが分かると思います。
 それがものすごく先鋭化したのがレーザーです。レーザーの発明で光学の世界が変わってしまいました。太陽の光の莫大なエネルギーに,密度で匹敵するようなエネルギーをレーザーは持っているわけですから。そしてそれがまた非常に有用です。レーザー加工からリソグラフィーにいたるまで,光のエネルギーを使ったプロセスが実現しています。
 光のエネルギーをいかに有効に活用していくのかが光学の1つの側面でもあります。その意味で光というのは,情報やエネルギーを運ぶ媒体として,非常に広い応用範囲を持ち得るわけで,将来はまた全然違うところに使われるかもしれません。そういう可能性がある分野だと思います。
 ですから,光の新しい使い道というのを見つけてもらえると非常に面白いのではないでしょうか。もちろん光だけでは話は済まないので,それを受ける物質も含めてですが,汎用性や幅広い応用可能性,そういうものがポテンシャルになって,さらに新しいものに発展したら面白いと思います。

黒田 和男

黒田 和男(くろだ・かずお)

1947年 東京都生まれ 1971年 東京大学 工学部 物理工学科卒 1976年 東京大学大学院 工学系研究科博士課程修了 1976年 東京大学生産技術研究所 助手 1983年 東京大学生産技術研究所 助教授 1992年 コロラド大学客員研究員 1993年 東京大学生産技術研究所 教授 2012年 定年退職し,東京大学名誉教授 2012年 宇都宮大学オプティクス教育研究センター特任教授
● 研究分野
気体レーザー,フォトリフラクティブ材料とその応用,フェムト秒レーザーの波長変換とその応用,ホログラフィック光メモリー,レーザーディスプレイにおけるスペックル対策など
●主な活動・受賞歴等
SPIE, OSA, JSAPフェロー, 日本光学会会長

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