【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

すこしだけ待てば次の朝,光学はまた楽しくなるモンタナ州立大学 Joseph Alan Shaw, Ph. D.

ほんの少し時間を置くだけで,次の朝にはまた楽しくなるかもしれない

聞き手:研究・開発プロセスにおいて,自信を喪失されたり試行錯誤して苦悩された苦いご経験がありましたら,是非そのエピソードをお聞かせください。

Joseph:私たちはさまざまな興味から研究をしています。技術者や科学者として,その問題を解決するようにさまざまな訓練をしたはずです。たしかに問題は存在しているかもしれませんが,実験をすることによってその解決を見つられます。問題や困難を解決するために考えるのはとても面白いのですが,さまざまな解決方法を試す時間がないのが難しいところです。
 私たちは教授として授業も教えないといけない。授業を教えるのは好きですけど。授業も教えたいし,学生を手伝うのもしたい。それと同時に研究問題も解決したいので,この時に学生の力を借りてその問題を一緒に解決してしまいます。しかし,問題を解決するのには資金も必要ですので,なかなか簡単には行かず,時間もかかります。
 単に研究の資金をもらうだけではなく,研究成果を出すまでその資金をもらい続けるのは簡単なものではありません。それだけではなく,問題にあった人や仕事ができる学生を見つけることも,そんなに簡単ではありません。
 また大学院生のときに希望がもうないと思った事もあります。時期の違いこそあれほとんどの大学院生が経験しているでしょう。そしてそれは,研究をする時によく感じると思いますね。なぜなら,研究は他人がまだやってない事をやるわけです。それは学生にとって難しく勇気を失ってしまいます。私自身,授業を受けながら試験には合格しないといけないし,卒業論文もあるので本当に疲れました。試験はよくできましたが,ただその後,光学の事はもう考えたくなくなりました。
 私は研究室で忙しくして,毎日何かをやろうと思っていましたが,それは光学には関係がありませんでした。ただ忙しくするためだけのものでした。これは2,3ヶ月ぐらい続きました。ある日急に,アイデアが頭に浮かび測定をやり始めました。そして,この時,自分がまた光学をやりたいという事に気がつきました。試験の準備で頑張りすぎてやる気がなくなりかけましたが,また立ち直らないといけないと思い,最初からやり直しました。
 教授の私は学生の好きなようにさせます。学生が後ろ向きになった時や落ち込んでいる時になったら,そこで私が学生を励まします。私は学生にほんの少し時間を置くだけで,次の朝に起きたときには,光学はまた楽しくなるかもしれない。そんな気分になれなかったら別な事をやればいい。もし楽しく感じれば最後まで終われるかもしれない。というようなことを言っています。

日本とアメリカでは学生がプレッシャーを感じるタイミングが違う

聞き手:日本人の学生とアメリカ人の学生についてあればお教えください。

Joseph:もちろんあります。ほとんど文化の違いだと思いますが,学生の中身は似ていて,アメリカ人であろうと日本人であろうと,成績のことや卒業して良い仕事を見つけられるのかといった同じような悩みを持っていると思います。しかし,その悩みに関してどのように対応するのか,またはどのようにそれを表現するのか,そして人とどのように接触するのかに文化の違いがあると思います。私はそんなに長く日本にはいないのですが大きく違いを感じているのは,日本の教育では入学試験を強調するところです。アメリカでは入学試験をしません。似ていますが,学生たちは基準試験を受けます。この試験で良い成績をとったら,良い大学に入れます。例として,スタンフォード大学に入学するための入学試験は受けませんが,基準試験を受けて大学へ申請をします。
 良い大学もたくさんあります。アメリカでは,やり方が違っていてスケールも大きいです。良い成績をとったら,どんな良い大学にも進学できます。国立大学もあり,誰でも進学できます。
 このシステムはとても良いと思います。それは,高校で勉強がうまくいっていないが,かなり能力のある学生がいたときに,このような教育システムなら学生を救うことも可能です。
 日本の生徒は入学試験で良い成績を取るために大きいプレッシャーを感じ,頑張って受験勉強をします。大学に入ったら,成績のことをあまり心配していないかもしれません。アメリカの教育システムでは,大学に入ってから良い成績をとるようにプレッシャーを感じます。つまり,プレッシャーを感じるタイミングが違うのです。
 一般的に,どっちの方が良いのかではなく,ただ日本の教育システムとアメリカの教育システムが違うというだけです。

<次ページへ続く>
Joseph Alan Shaw

Joseph Alan Shaw(じょせふ・あらん・しょう)

University of Alaskaで電子工学を専攻し,University of Utahで電子工学の修士,University of Arizonaで光学の修士とPh.D.を取得。
Montana State University のOptical Technology Center(OpTeC)の,present Directorを務める。SPIEとOSA会員。
●研究分野
光学リモートセンシング機器の開発,放射測定と偏光イメージングとライダーのキャリブレーション

本誌掲載号バックナンバー

OplusE 2016年6月号(第439号)

特 集
最新ドローン技術 ―センシングを中心として―
販売価格
1,000円(税別)
定期購読
8,500円(1年間・税別・送料込)
いますぐ購入

私の発言 新着もっと見る

本誌にて好評連載中

私の発言もっと見る

一枚の写真もっと見る