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研究者として成功するためには新しい発明と併せて大いなる努力が必要KLA-Tencor Corp CTO Dr. Ben Tsai

 2015年の12月16日から三日間にわたり「SEMICON Japan 2015」が東京ビッグサイトにおいて開催された。同イベントの製造イノベーションフォーラムにおいて,「Yield Management in Sub-10nm ChipManufacturing」と題した講演を行ったのが, 米国KLA-Tencor CorpのCTO(Chief Technology Officer)のDr. Ben Tsai氏である。今回の私の発言では,旧知の方のご紹介により多忙な同氏にお話を伺った。

初めての自分のカメラを持ち光学に興味を持つ

聞き手:本日はお忙しいところありがとうございます。早速ですが光学に興味を持たれたきっかけをお教えください。

Ben:中学生になってすぐのころに,初めての自分のカメラを持ちました。そこから光学に興味を持ちました。その他にもステレオやオーディオも好きで楽しい時間を過ごした覚えがあります。
 それで電子工学のエンジニアになろうと思いました。台湾の国立台湾大学に進み,研究テーマにホログラフィーを選びました。その後,アメリカのアーバナ(Urbana)にあるイリノイ大学に行き,博士号を取得しました。
 その当時(1980年ごろ),台湾では高度な技術を使った製品を作っている会社がありませんでした。例えばTSMCは80年代後半に設立されています。ですからその当時,私の周りの友人を含め,さらに勉強をしようと考えるとアメリカや他の国に行く必要がありました。
 大学院で私がしたかったのは画像処理の研究でした。テーマはLIDAR:Light Detection and Rangingに関してです。レーザーを使って画像検出により距離を測る技術です。日本語では,レーザーレーダーとも言われていますね。
 私は海の上で気圧を計測しました。イリノイ大学の所属の研究室では,私が最初にこの技術に関しての研究をしましたが,その後,私の後輩が南極においてより高精度の計測を行いました。
 当時のコンピューターの性能は満足するものはありませんでしたが,そのことを思い出すと大学院の学生時代に働くお誘いを受けた数社のことも思い出します。
 まずコダックの研究所から,Adobe社のPhotoshopのような画像処理ソフトの開発に関してオファーを受けました。勤務地はロチェスターでしたが,ここは年間200日以上,曇りの土地なので,良い天気の土地で勤務希望だった私はお断りしました(笑)。
 IBMのワトソン研究所で音声認識に関しての研究でお誘いを受けました。今のアップルのSiri(Speech Interpretation and Recognition Interface)の様な技術ですね。当時の大型コンピューターを使ってですが,大きさが一部屋いっぱいあるが性能がとっても悪いコンピューターを使ってのことでした。今のSiriは,良くなっていて,とっても良いと思います。
 他にもAT&T Bell社の研究所で光通信の研究といったお誘いも受けましたが,結局,KLA Instruments社で働くことにしました。1984年のことで,当時は小さな会社でしたが,将来性があると思いましたし,画像処理の技術を使って働けると思いました。
 この会社が現在のKLA-Tencor社になります。

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Dr.Ben Tsai( ベン・ツァイ)

Dr.Ben Tsai( ベン・ツァイ)

国立台湾大学から電気工学の学士号を受け,イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で電気工学の修士号と博士号を取得。 1984年KLA-Tencor社の前身となるKLA Instruments社に入社。1994年CTO就任。2004年から二年間東京エレクトロンの技術担当の副社長を務め,2006年KLA-Tencor社に復帰。
●KLA-Tencor 社について
本社はアメリカ合衆国カリフォルニア州。半導体設備産業におけるリーディング・カンパニーであったKLA社とTencor社の合併により1997年5月に誕生した。以来,半導体検査・計測装置メーカーの枠を超え,ソフトウェアの開発・充実や先端企業の買収などにより,歩留まり管理=イールド・マネジメント・ソリューションの専門技術集団として,業界での地位を確立している。アメリカ,ヨーロッパ,日本及びアジア太平洋地域にサポート拠点を展開し,売り上げの15?20%をR&Dに費やす研究開発型の企業である。URL:http://www.kla-tencor.com/

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