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新しいものを持ってきてお客さんに知らしめるというのが,私の仕事オーテックス(株) 福井 博

新しい研究がされているのを「何年先に日の目を見るかな」とみる

聞き手:仕事上のプロセスにおいて,試行錯誤して苦悩された苦いご経験がありましたら,是非そのエピソードをお聞かせください。

福井:普通,組織というのは,トップがいて,中間がいて,私みたいなぺーぺーがいるではないですか。幸か不幸か,最初からレーザーをどうやって売ったらいいかとか,お客さんにどうやって説明せよというのを教わる人が誰もいなかったのです。分かっている人がいないものですから,自分で勉強して自分なりに説明できるようにして,お客さんの所へ行って説明するのです。結果,「こちらの方がいい」だとか「あちらの方がいい」というのも,アメリカもしくはヨーロッパから自分で持ってこなければいけなくて,それも全部自分でやりました。
 だから,試行錯誤は今でもしょっ中しておりますが,苦い経験はしてないと思います。新しいものを持ってきて,お客さんに知らしめるというのが,私の仕事です。日本にはない,もしくは世界でも他にはないというものを持ってくることができて,お客さんが喜んで受け入れてくれる時が最も楽しいですね。
最新のサーモパイルディテクター

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 レクセルの水冷のアルゴンレーザーも,始めた時は上にコヒレント,SPがいて,レクセルは3番手でどん尻だったのです。官公庁は,昔も今もやっぱりブランド志向が強いのですが,民間は次々と置き換えていました。
 私が新しいサプライヤーを見つけるときというのは,本当にベンチャーで新しく出てきたのが一つ,それから例えば,SPとかコヒレントにいてスピンオフした連中,それが狙い目なのです。というのは,SPやコヒレントにいて不満,「俺の技術を認めてくれない」「新しいものをつくりたいんだけれども」という理由でスピンアウトすると,そちらの方がいいものができることが多いように見受けられます。

聞き手:どうやってそういう商品を見つけてこられたのですか。

福井:いろいろです。たまたま人づてに聞いたり,もともと付き合っていた連中が独立したり,展示会や雑誌だったり。それから,スピンアウトではないですけれども,新しい可能性がある研究がされている所では,大体3年から5年先に新しいものができてきます。雑誌で,その時分から目を付けておいて,「何年先に日の目を見るかな」と見ているのです。もちろん日の目を見なかった会社もあります。面白いなと思いながら,全然アプローチの違う技術が出てきたりもします。その当時は「いいな」と思っていても,「それより簡単だし安定性もある」ものがあると,そちらへいってしまいます。だから,そういう所を数多く見ていないと駄目です。

聞き手:いったいどれくらいのものを,計測器を含めて見てこられたのでしょうか。

福井:とにかく多過ぎて,数は分からないです。展示会,それから雑誌がいろいろあるではないですか。新製品ニュース以外にも「ここで,こういう研究をしている」とか「こういう新しい測定法が出ました」というのは,とにかく数が多いのです。その他に,ペーパーを引っ張れば結構出てきます。だから,月に100やそれぐらいは見ていないと済まないのではないでしょうか。逆にいうと,それがこの仕事の醍醐味です。それがなくなってしまうと,この仕事をやってもしょうがないかな。(笑) <次ページへ続く>
福井 博(ふくい・ひろし)

福井 博(ふくい・ひろし)

東京都出身。
1987年にオーテックス株式会社設立。
オーテックス株式会社はレーザ機器や電子機器などの輸入・販売を行っている。
1990年にテクニカルセンター開設し,2002年UV硬化エポキシ材料特許取得。
2008年には可視光硬化エポキシ材料発売するなど,独自の商品の開発・販売も行っている。
URL http://www.autex-inc.co.jp/index.html

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