【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

いろいろな方々のアイデアを結び付けてポリマーを電話で合成する電気通信大学 学長顧問 宮田 清蔵

ポリマーを電話で合成する

聞き手:研究・開発プロセスにおいて,自信を喪失されたり試行錯誤して苦悩された苦いご経験がありましたら,是非そのエピソードをお聞かせください。

宮田:研究は趣味でやっているようなものですから,もし苦労があってもそんなに苦労とは思いません。私は至る所でいろいろな方々のアイデアを結び付けていくのが得意でして,たとえば,理論的に分からないところは,誰かほかの先生に聞いています。私は「ポリマーを電話で合成する」とも言われています(笑)。ですから研究でそんなに困ったということはないんですね。 remark56_4  ただ,学長を務めていた時に,社会科学と自然科学の違いを思い知った時には苦労しました。人の気持ちや態度が状況によって変わってしまいます。例えば人事がからむと,こちらがよかれと思ってやったことでも,それまで仲が良かった人が,その人事に反対なら簡単に敵になってしまいます。学長なんかやっていられないと思うこともあり,そういう意味ではとても苦労しました。
 研究は非常に楽しいですね。いまでも思い付くと特許事務所に電話,メールを打って調べて,特許を取ったりしています。研究費を集めることは得意なんです。研究の構想を立てて,学内の人とコラボレーションして予算を獲得します。私が考えた企画書は100%ではありませんがほとんど成功しています。それを見こまれて電通大に招へいされました。国立大学評価機構というのがありまして,国立大学は何年かに一度必ず評価されます。これは1大学あたり80ほどの項目があり,S,A,B,C,D で評価されます。全国立大学でのべ7000項目ほどありますが,S評価はすくなく,昨年は九州大学と電通大の2校しかありませんでした。電通大のS評価は外部資金を非常にたくさん集めたということが理由でしたので,私も少しは協力できたと思いますが,学長には大変喜んでもらえました。ただ,この項目でまたS評価は無理ですから,替わりにS評価を取れるプロジェクトをやりましょうと提案をしています。 <次ページへ続く>
宮田清蔵(みやた・せいぞう)

宮田清蔵(みやた・せいぞう)

1941年東京都生まれ 1969年東京工業大学大学院 博士課程修了 1969年東京農工大学工学部 講師 1970年東京農工大学工学部 助教授 1984年ベル研究所 客員研究員 1986年東京農工大学 教授 1995年東京農工大学大学院 生物システム応用科学研究科教授・科長 2001年東京農工大学長 2005年(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)シニアプログラムマネージャー 2008年電気通信大学 監事 2013年電気通信大学 学長顧問
●研究分野
金属生産工学,高分子物性・高分子材料,科学教育,応用光学・量子光工学
●主な活動・受賞歴等
1985年高分子学会賞 受賞 2002年高分子科学功績賞 受賞 2004年フランス教育功労章オフィシエ 受勲

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