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特別寄稿 現場目線の開発力を積み上げ,創業60周年へ中央精機株式会社 相談役 堀田 節夫

現場で生かされる道具づくりを

 この「精密位置決めユニット」は,もともとは私共の「汎用ホログラフィ干渉計」の一部分でした。1967年に,応用物理学会の先生方がホログラフィ分科会で新しいホログラフィの研究をするのに,それぞれの研究所が同じ設備道具で実験研究をしてはどうかと提案があり,その製作企業として私共が選ばれました。ホログラフィ開発実験に関わるほとんどの大学,研究所に「汎用ホログラフィ干渉計」が納品されました。この干渉計には他に見られない特徴が多々あります。その第1が,道具がユニットになっていて部品がいろいろと交換できることです。光源や光軸を決める集光レンズ群,反射用ミラーの選別,試料台,それらが交換しやすいようにユニットで揃えられており,被検物やミラーやレンズの位置を自由に選択でき,精密に作動させる部品としてメカニカルユニットが設計されました。その1つが「XYステージ」です。これが現在,干渉計だけではなく,検査機,専用機などに使われるようになり,現在の「精密位置決めユニット」の商品となって活用されています。この製品は名称を「ポジショニングユニット」と改められ,さらに多くのユーザーに迎えられるべく計画が進められています。この干渉計で特筆しなければならぬことは,基盤(多くは鋼鉄製定盤が使われています)を支える台が空気バネ式の除振装置になっていることです。実験など細かな振動を除くために,昭和電線電纜(株)と私共で共同開発という形で製作されたものです。
 この精密位置決めユニットを製造する際に,出来上がった製品のステージの微動,真直度を正確に捉えるものとして,レーザー光を利用した測定検査方法を私共の工場で新たに研究開発しました。その検査道具から生まれたのが,「ストレーター」(図2)です。
図2 ストレーター,レーザーオートコリメータ

図2 ストレーター,レーザーオートコリメータ

また,角度測定の専用機とした「レーザーオートコリメータ」(図2)も生まれています。これらは市場に宣伝され,長岡技術科学大学の高田孝次先生の御指導などによって微動方向のXY,回転,ウネリなどが検査できる器具として商品化され,好評を得ております。私共の普段の仕事の中で生まれた道具が,多くの現場で活用されているということは私共の仕事の大いなる誇り,喜びであります。
 創業以来,私共が看板製品としたのが工作顕微鏡「ツールスコープ」(図3)です。研究所,工場などで自由に利用できる顕微鏡の鏡筒ユニットですが,この製品を私共は光学測定機展に主力製品として展示しております。この光学測定機展は,私共も会員として参加しております「日本光学測定機工業会」(現在正会員会社は7社)が主催し毎年行われているもので,第1回は1964年で,すでに50年近くの開催になります。ちなみに第5回(1968年)「全日本光学測定機展」の会場は東京・千代田区の科学技術館で行われました。
図3 ツールスコープ

図3 ツールスコープ

出展社は10社で,代表的な製品として,オリンパスは測定装置MFC-A,ニコンは万能投影機R-14,ミツトヨは投影検査器PH-350,トプコンは工具顕微鏡TUM,ユニオンは工場顕微鏡UFM,そして私共中央精機ではツールスコープを出展しました。それぞれのメーカーでも,顕微鏡・投影器が光学測定機の主力でした。
 この展示会はその後,「光ナノテクフェア」,「測定計測展2013」とますます発展して継続されています(前回出展社数57社)。出展の商品群も大きく変わりましたが,わが国の産業工業にとっての基礎工業として評価されております。 <次ページへ続く>
堀田節夫(ほった・せつお)

堀田節夫(ほった・せつお)

1932年東京生まれ。1951年愛知県立時習館高等学校を卒業,同年4月早稲田大学第2文学部社会学科に入学。同科3年で中退,創業。1955年中央精機株式会社を創立,代表取締役社長を経て,同社相談役として現在に至る。
●日本光学測定機工業会 元理事。全日本光学測定機展実行委員長などを勤めた。

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