【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

われわれは,まだ光のすべてを理解していないアリゾナ大学 光科学部 偏光研究室 Russell A. Chipman

科学は知的好奇心をくすぐる。光に通じた科学者に期待

聞き手:日本人は人前で質問することが苦手だと言われていますが,学ぶ姿勢においてアドバイスなどありましたら。

Chipman:いろんな学生に教えてきましたが,学ぶ姿勢において何よりも大切なのは好奇心です。彼らの学ぶ意欲,好奇心をかき立ててやることが一番重要だと思っています。言語が違えど,科学は知的好奇心をくすぐってくれますからね。

聞き手:今後の光学分野を担う日本の若手研究者・技術者,大学生へメッセージをお願いします。

液晶デバイスの複雑な偏光を評価する装置。大変高額な装置だが,COREの展開に賛同したナルックスが実験ラボのために貸し出してくれている。ティーチングアシスタントの石田章伍さんは「計測には2~3時間掛かりますが,あっという間に感じるほど充実した授業です」と実験の面白さを語ってくれた

Chipman:まずは,「光」というものに対して好奇心を磨いてください。例えば,科学雑誌の『Newton』を見た時,記事の内容が分からなくても写真からはその記事の内容が類推できるように,光学に興味をもってほしいと思います。われわれは光をさまざまなものに応用してきましたが,光学関連の記事や物理学の記事を目にするたびに,まだ光のすべてを理解していないのだということに気付かされ,非常にテンションが上がります。私たちが宇宙について学び「光」の詳細を解明してきたように,次の世代では,宇宙を研究することでわれわれの体や病気,自然について解き明かしてくれることを期待しています。光学や物理学を勉強する日本の学生諸君が,そういった科学者の未来を担っていってほしいですね。
 米国の大学でも光学部門があるのは数校で,ほとんどの大学では光学系の教授が数人いる程度です。光学を専攻している教授はとても多いのですが,日本と同じように,物理学や電気工学,機械工学の一環として光学部門が位置づけられています。この状態では,光学系の一部を学ぶだけで,光学設計や光計測および光学機器などの分野を学んでいないことがあります。ですから,COREのような光学分野を網羅して学ぶことができるところはとても重要なのです。今後,さまざまな企業とCOREが組んで共同研究などを展開していくためにも,光の分野に精通した科学者の育成が重要となってきます。私の研究室もお手伝いしていきます。
Russell A. Chipman(ルッセル・チップマン)

Russell A. Chipman(ルッセル・チップマン)

1976年マサチューセッツ工科大学学士号取得(BS)。1977年パーキンエルマー社に光学エンジニアとして勤務。1978?1981年ベックマン・インスツルメンツ社に物理学者として勤務。1982?1985年アリゾナ大学大学院にリサーチアシスタントとして勤務(1984年アリゾナ大学光科学部で修士号取得(MS))。1987年アリゾナ大学光科学部で博士号取得。1987?1997年アラバマ大学のハンツビル校に物理学准教授として就任。1997?1998年ジョンソン・エンド・ジョンソン社に光学関連部門のマネジャーとして勤務。1999?2000年TeraStor社に光学関連部門のマネジャーとして勤務。2000?2002年JDSユニフェーズ社のネットワーク機器部門およびシニアマネジャーとして勤務。2002年よりアリゾナ大学の教授に就任,光科学部の偏光研究室を主宰。現在に至る。OSA(米国光学会)フェロー, SPIE(国際光工学会)フェロー。
●専門:分光偏光測定機やイメージ偏光計の開発を手掛け,ファイバー用光学部品,ウエーブガイド,液晶,偏光機能部品,および自然界の偏光に関する研究に従事。光学の分野で12の特許を持つ
●主な受賞歴など:2005年,米航空宇宙局(NASA)Tech Brief Award受賞。2007年, 偏光の研究によりSPIE GGストークス賞を受賞。Applied Optics の編集委員(Topical Editor),OSA偏光工学グループのチェアでもある。

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