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われわれは,まだ光のすべてを理解していないアリゾナ大学 光科学部 偏光研究室 Russell A. Chipman

COREでアリゾナ大の先端光学実験ラボコース開始

聞き手:Chipman先生は,7月1日から宇都宮大学オプティクス教育研究センター(CORE)の客員教授になられ,大学院博士前期課程(修士)向けの先端光学実験ラボコースの授業をされるそうですね。宇都宮大で,この実験コースを講義内容に選ばれた理由をお聞かせください。

Chipman:COREのセンター長でもある谷田貝豊彦先生をはじめ大谷幸利先生や早崎芳夫先生たちは,栃木ひいては日本における光技術産業発展のために,COREを主だった国際的な光学機関に育成しようと,米国やその他の国のさまざまな光学機関と連携を図っています。そこで,昨年までわれわれの学部長であったJames C. Wyant先生が,谷田貝先生の構想に大変共感し,宇都宮大とアリゾナ大で協定を結んだのです。お互いの光学研究センターを強化するためにさまざまな方法を検討しました。日本に関心をもち,日本語を学び,日本の友人たちと親交を築いてきた私は,アリゾナ大で考案し実践している実験コースの授業を宇都宮大の学生に教えることにしました。すでに数回にわたり来日しており,学生たちにとってこの実験コースの授業が最も有意義なものとなるよう,アリゾナ大と同じ実験装置を使うことにし,谷田貝先生や大谷先生と段取りを整えているところです。7月からは授業も始めていますし,今年は宇都宮大での活動に専念し,日本の学生たちと一緒になって光学の奥深い概念を解き明かしていく喜びを堪能しているところです。

聞き手:Chipman先生が宇都宮大で教える実験ラボコースは,単位を取得できるそうですね。他の大学でも海外の先生が客員教授となっていると思いますが,恐らく実際に単位の取れる授業,特に,実験コースを行っている例はほとんどないと伺いました。

Chipman:この実験ラボコースは,光学を学ぶアリゾナ大の大学院生にとっても,私自身にとっても重要な授業となっています。親しみやすい初歩的なものから,光についてあらためて考量するような難解なものまで含まれています。われわれ教授陣にとっても,“光”は神秘的なもので,それを明白にするのは一筋縄ではいかないものです。そこで,宇都宮大の学生にも腰を据えて学んでもらい,かつ単位を取得できるよう,日本の大学の規定に合わせて90分の授業を15回行うことにしました。宇都宮大での授業は,私にとっても新たなる挑戦であり,大きな転機になると思っています。

聞き手:実験コースの授業は評判になり,人気が出そうですね。

Chipman:今回は初めてですから少人数での授業ですが,来年,再来年と講義を続け,もっと多くの学生にこの実験ラボコースを学んでほしいと思っています。また,栃木に研究拠点などがある企業だけではなく,全国の研究者・技術者の皆さんにも,ぜひ参加してもらいたいですね。まず今年は,授業内容の構成など基板を構築していきます。 <次ページへ続く>
Russell A. Chipman(ルッセル・チップマン)

Russell A. Chipman(ルッセル・チップマン)

1976年マサチューセッツ工科大学学士号取得(BS)。1977年パーキンエルマー社に光学エンジニアとして勤務。1978?1981年ベックマン・インスツルメンツ社に物理学者として勤務。1982?1985年アリゾナ大学大学院にリサーチアシスタントとして勤務(1984年アリゾナ大学光科学部で修士号取得(MS))。1987年アリゾナ大学光科学部で博士号取得。1987?1997年アラバマ大学のハンツビル校に物理学准教授として就任。1997?1998年ジョンソン・エンド・ジョンソン社に光学関連部門のマネジャーとして勤務。1999?2000年TeraStor社に光学関連部門のマネジャーとして勤務。2000?2002年JDSユニフェーズ社のネットワーク機器部門およびシニアマネジャーとして勤務。2002年よりアリゾナ大学の教授に就任,光科学部の偏光研究室を主宰。現在に至る。OSA(米国光学会)フェロー, SPIE(国際光工学会)フェロー。
●専門:分光偏光測定機やイメージ偏光計の開発を手掛け,ファイバー用光学部品,ウエーブガイド,液晶,偏光機能部品,および自然界の偏光に関する研究に従事。光学の分野で12の特許を持つ
●主な受賞歴など:2005年,米航空宇宙局(NASA)Tech Brief Award受賞。2007年, 偏光の研究によりSPIE GGストークス賞を受賞。Applied Optics の編集委員(Topical Editor),OSA偏光工学グループのチェアでもある。

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