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撮る,見る,聞く。カメラは感性を表す道具(株)ニコン ニコンフェロー 映像カンパニー 後藤研究室長 後藤 哲朗

紫・サムライブルー・モノクロデジカメの色作りは今後の課題

聞き手:デジカメでは,どういう色を出すのが難しいのですか?

後藤:出せない色は紫色やサムライブルー。画像センサーの半導体としての特性,カラーフィルターの性質もあるでしょうが,難しいですね。どのメーカーでも苦労しているのではないでしょうか。他に出せないのが,実名をあげますとオートバックスの車体の色。蛍光色ですからこれはフィルムでも無理でしょうね,きっと。赤外線から紫外線まで広い波長を扱う特殊フィルム,特殊な画像センサーが世の中にありますので,できないことはないのでしょうが,民生品のデジカメになるとアウトです。そのような特殊な蛍光色は別としてなかなか表現し切れていないと言われているのが最近ではモノクロです。この頃モノクロ作品がブームのようで,「目には見えないけれど何かあるね」といった深い階調まできちんと表現させるシステムは,特殊なもの以外まだないですね。カメラなのかプリンターなのかと言う状態ですから,デジカメの色作りはまだまだ宿題山積みです。

聞き手:今,フォトフレームが普及してきています。ディスプレイの解像度や色味によっても色の出方が違ってきますよね。そちらも合わせての開発になりますか。

後藤:そうですね。電気光学素子であるディスプレイ類は光を目に飛ばすわけですから,光を反射してみるプリントとは性格が違ってきて,少し厄介になってきます。また,簡易なフォトフレームと違って,テレビは動画用にフィットさせるため標準状態ではかなり派手な色調になっているそうですので,その辺のあんばい加減がなかなか難しいわけです。しかしフルハイビジョンの絵はたった2メガですが,これから「4K」「8K」といった次世代の映像フォーマットが盛んになって来ますと,やっとデジカメのフル機能が発揮されるとても精細な画像が観賞できるようになるでしょうね。普及した際には動画専用ではなく,静止画観賞用としても非常に優れたものになると私は考えています。それこそディスプレイを正しくチューニングして,デジカメの絵がきれいに見えるようになるのではないでしょうか。 <次ページへ続く>
後藤 哲朗(ごとう・てつろう)

後藤 哲朗(ごとう・てつろう)

1973年,千葉大学工学部電気工学科卒業。同年,日本光学工業株式会社(現?ニコン)入社,機器事業部(現インストルメンツカンパニー)でサーマルカメラ(赤外線カメラ)の開発に従事。1975年,カメラ設計部に異動,フィルム一眼レフカメラ「F3」で電気回路設計,「F4」では電気系リーダー,「F5」ではプロダクトリーダーを勤める。1997年,カメラ設計部ゼネラルマネージャーとして,フィルムカメラシステム全般を指揮。2004年,映像カンパニー開発本部長・執行役員に就任。「D3」などのデジタル一眼レフカメラ,交換レンズ群,コンパクトデジタルカメラ,アプリケーションソフトなど映像製品全般の開発を指揮。2007年,映像カンパニー副プレジデント就任。2009年より現職。

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