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ベンチャーで成功するには,どこに用途があり,誰が買うのか分かっている必要があります。東京大学 物性研究所 渡部 俊太郎

エキシマレーザーの開発

 私は東京大学の物理工学出身なのです。研究室は故小瀬輝次先生と小倉磐夫先生の研究室で,当時はHe-Cdレーザーのような金属蒸気レーザーの研究を行っていました。
 その後,電子技術総合研究所に入り,短波長のエキシマレーザーを核融合に使う研究を始めたのです。日本において,エキシマレーザーを発振させたのはわれわれの研究グループが最初になります。
 研究を始めた頃は,半導体露光装置といった現在のような用途に,エキシマレーザーが使われるとは夢にも思っていませんでした。エキシマレーザーが開発された頃は,あれにも使える,これにも使えると,みんな夢のようことを言っており,日本国内の主要な電機メーカーは,当時こぞって開発をしていました。それが全部集まって「超先端加工大型プロジェクト」が発足し,エキシマレーザーの開発が本格的に始まったのです。現在,エキシマレーザーは用途が絞られてしまい,半導体露光装置や液晶パネルのアニーリング,医療などに特化した分野だけで使われている状態です。そのようなこともあり,日本で光源としてのエキシマレーザーを製造しているメーカーは1社だけになってしまいました。
 日本では,半導体露光装置の光源用をメインにエキシマレーザーを開発してきたのですが,海外のメーカーに比べると1年ぐらい開発が遅れました。今では,国内外のメーカーともに技術的な差はほとんどありませんが,この1年の差で国内メーカーは苦しい戦いを強いられています。
 というのも,エキシマレーザーを使った露光装置は高価で,大量に売れるようなものではありません。ですから,いったんメーカーが決まってしまえば別のメーカーに変えることはほとんどないのです。
 その一方で,半導体露光装置そのものはニコンとキヤノンの日本勢がこれまで独占してきました。それがここにきて,オランダのASLMというメーカーの急伸により,日本の独占体制が崩れつつあります。
 バブルの頃は,半導体露光装置の開発は企業がすべて自前で行ってきました。現在の半導体露光装置で,もっとも普及している光源は,波長が248nmのKrFエキシマレーザーですが,より短波長のArFレーザー(波長193nm)もそろそろ普及し始めています。
 次世代光源であるF2レーザー(波長157nm)は,現在開発が進められていますが,長引く不況により国内の企業は自前で開発する体力はなく,政府の補助金を使って各企業が開発している状況です。

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