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地球上に存在するすべてのエネルギーの原点は水の光分解ではないでしょうか。東京工芸大学 本多 健一

光電気化学の道へ

 光との出会いは,大学生の時に写真化学の大家である菊池眞一先生の研究室に入ったところからスタートします。
 現在の写真はデジタルが主流になりつつあり,化学とはあまり関係がありませんが,昔のフィルムを使った写真は感光剤にハロゲン化銀を使っていましたから化学の世界と関係が非常に深かったのです。
 たくさんの光源に囲まれた研究室で卒業研究を行いましたから,自然と光に関心をもつようになり,いつしか化学の世界のなかでも,特に光との関係が深い光電気化学の研究をするようになっていたのです。
 そこで行ったのが湿式電池に光を当てるという研究です。研究を始めたのは大学院生の頃でしたが,当時はそのような研究をやろうとする者は誰もいませんでした。
 といいますのも,ものが見えるということは,光が当たっているということですから,わざわざ光を当てなくても最初から光は当たっているわけです。
 当たり前のことをあえて意識的にやったことがすべての始まりとなります。正直なところ,その当時は,特に目的意識をもって研究を行っていたわけではありません。強いて動機を挙げるならば,電池に光を当てたらどのようになるのだろうかという好奇心からとなります。大学院を卒業しパリ大学に留学していた3年間(図1)は研究を中断していましたが,帰国してNHK技研から東大生研に移った頃から本格的に研究を開始したのです。
 そのようにスタートした研究が,後に酸化チタン電極による水の光分解(本多・藤嶋効果)や酸化チタンを使った光触媒の研究へとつながっていくのです。
 光を使ったエネルギー変換や光触媒の研究は藤嶋昭博士(現Z神奈川科学技術アカデミー理事長)と一緒に研究を行ってきました(図2)。
 現在,さまざまな応用が考えられている酸化チタンの光触媒効果は,本多・藤嶋効果の発見が出発点になっていますが,実のところを言いますと,光触媒の研究は酸化チタン電極による水の光分解研究の行き詰まりから生まれたものなのです。
 といいますのも,今の酸化チタンによる水の光分解は波長400nm以下の紫外線でしか行えませんから効率的ではなく実用化にはまだ至っていないのです。そのため,現在,増感と呼ばれる可視光への波長帯域の拡大が研究されていますが,酸化チタンをしのぐ高い安定性と安全性を兼ね備えた材料がまだ見つかっていません。
 そのような状況のなか,1990年代から,酸化チタンの強力な光酸化力に注目し,この効果を何かに応用できないかと藤嶋研究室とTOTO(東陶機器)が共同研究を開始し,光による酸化チタンの超親水性化(非常によく水になじみ,一様な水の被膜を作る性質)を発見したのです。光触媒として酸化チタンの応用がこれほどにも拡大したのは,高い安定性と強光酸化力に加え,この超親水性の発見があったからにほかなりません。

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