【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

大きなブレイクスルーをしようとすればするほど,原点に戻って考えることが大切です。慶應義塾大学理工学部 慶應義塾大学フォトニクス・リサーチ・インスティテュート所長・教授 小池 康博

大いなる前進

小池: 1990 年にベル研から日本に帰ってきましたが,この年の4月1 日に研究が大きな進展をみせます。
 私はそれまで,モノマーの反応性の違いを使ってPOF 内に屈折率分布を作っていましたが,実はこの方法でPOF を作るとポリマー内に大きな不均一構造ができるのです。そして,この不均一構造が過剰散乱を引き起こしていたのです。そこで,従来のような方法ではなく,分子の大きさの違いを利用して屈折率分布を形成するという方法を考え,実験をしてみたところ,ついに透明なGI 型POF ができたのです。

聞き手:闇から抜け出せた瞬間ですね。

小池:そうです。それで特許をすぐに取り,1994 年には日本経済新聞1 面のトップ記事になりました。そして現在につながっていくわけです。

聞き手: それにしても,GI 型POF の研究成果がなかなか出てこない状況で,小池先生が研究を続けることができたのはなぜですか?

小池:時代がおおらかだったということもあるかもしれません(笑)。現在は何でも成果主義ですが,そのころの私の中にはそういう焦りというのはあまりなくて,「プラスチック光ファイバーで高速光通信を実現する」という夢に向かって進んでいたら「目の前にある分からないもの」,言うなればブラックボックスにぶつかり,避けて通れなくて研究を続けたというだけに過ぎません。
成果がなかなか出なかった時期は確かにつらくはありました。しかし,そのようなときでも目標を見失っているわけではなくて,目標のハードルがただ高いだけなのです。ですから,確かに研究は大変だったけれども,不幸だったのかというと,不幸ではまったくなかったのです。

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