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CD-R事業での最大の山場は,“CDと完全互換”という開発の方向付けと市場の創出でした。名古屋工業大学 浜田 恵美子

業務用としてのCD-R

聞き手:CD-Rが普及するきっかけとなる市販のレコーダーが販売されるのはいつごろですか?

浜田:そうですね,1989年にCD-Rの事業を始めたときには,市販のレコーダーはまだなくて,ソニーさんの内部でお手製で作ってもらった機械を使っていました。
 ソニーと太陽誘電が折半して作ったスタート・ラボで最初にやったのが,CD-Rを使ったレコーディングサービスでした。このときは,やはり市場開拓という意味合いが大きかったと思います。レコーディングサービスをすることによって,CD-Rが売れるようになり,市販品のレコーダーはまだありませんでしたが,ドライブメーカーに一生懸命説明会をしてレコーダーを作ってもらうようにお願いしたのです。

聞き手:なるほど,これがメディアメーカーと家電メーカーの事業戦略の違いですね。「市場志向」の意味がだんだん分かってきました。

浜田:それで最初に出たレコーダーは,200万円もする業務用で,マランツ(現 ディーアンドエムホールディングス)さんやデンオン(現 デノンコンシューマーマーケティング)さん,パイオニアさんなどに出してもらいました。ですからCD-RのレコーダーはDVDやBlu-rayとは違い,放送局などで使う業務用のオーディオ機器としてスタートしたのです。

聞き手:今までCD-Rというのは,パソコンのデータ記録用として開発されたというイメージがあったのですが,業務用オーディオ機器としてCD-Rがスタートしたというのは初耳でした。

浜田:実はそうなのです。例えば新人歌手のプロモーション用CDを作ったりとか。

聞き手:そういう使い方もされていたのですか。

浜田:ええ。基本はもうオーディオですね。実際,ミュージシャンや,そういう方たちがものすごく関心持ってくださって,「自分で録音してCDがつくれるのだったらやりたい」とか。あとは,例えばラジオのジングル*などにしても,CDだったら頭出しが簡単にできます。それまでこういったものは,テープでやっていたのですが,CD-Rだとそれが簡単にできるということで,放送局が買ってくれたのです。あと,テーマパークなどで流す音楽なども自分たちでCDにできるということで,レコーディングサービスはいろいろなお客さんを開拓してくれました。
 やがて,そこにパソコンのソフトを作っている人たちが注目し,「それなら,CD-ROMも作れるんじゃない?」ということで,パソコンソフトのクリエイターがレコーディングサービスの新たなお客さんになってくれたのです。そのようなところにかかわっていたので,市場の変化というのも非常にもよく分かりましたし,お客さんのニーズもよく分かったのです。

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