【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

研究を登山にたとえたならば,山の裏側には別のもっと楽なルートがあるかもしれません。東北大学 名誉教授 山本 正樹

エリプソメーター

聞き手:先ほどエリプソメーターは高価だとおっしゃられましたが,それは現在でもそうなのですか?

山本:そうですね,現在でもエリプソメーターは3,000万~5,000万円ほどします。ですから,大学などですと,科学研究費を申請してからということになります。それだけの値段だと大型の申請をしないといけませんからなかなか買えません。

聞き手:そのように高額になる理由はどういったところにあるのでしょうか。

山本:それはまず,使っている光学素子がそれなりの値段がするということです。エリプソメーターには,必ず偏光子と検光子の2つの光学素子が必要になりますが,精度が高い計測をしようと思えば光学結晶を使います。このため光の直径を大きく取りたいと考えると,素子1つで50万円,100万円となってしまうのです。またこの他にも,偏光素子の方位角を非常に精密に測る必要があります。それを市販品でやるには,方位角エンコーダーを使いますが,精密計測しようとすると,角度でいう“秒”のオーダーの精密なエンコーダーが必要になります。これがまた,それなりの値段がするのです。こういったハードウエアの他に,自動計測をしようとすると,そのためのソフトウエアも必要になります。そして,現在は装置も発達し,分光エリプソメトリーといいまして,可視域の範囲で波長を変えてスペクトルを偏光状態の変化として取得できるような装置が市販されています。そのようなものになると,さらに計測データが波長ごとにたくさん出てきて,それを光学モデルに当てはめて光学特性や厚さなどを精密に出すといったことも行います。ですから,それら一式になるとどうしても数千万円の金額になってしまうのです。
 現在いろいろと工夫がされていて,もう少し簡便にして,波長も絞って単一波長で,角度も固定で測ることができるような低価格な装置も出てきましたが,それでも数百万円します。しかしながら,エリプソメーターは非常に精密な計測ができますから,昔からある技術ではありますけれども応用の余地は十分あると思います。

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