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ネオジム磁石に添加したレアアース金属の原子カラム元素マッピング九州大学 板倉 賢,松村 晶

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 ナノテク材料分野では,対象となる観察・分析領域が分子や原子レベルまで極めて微小になってきている。九州大学超高圧電子顕微鏡室に導入された走査・透過電子顕微鏡(STEM)は,電磁レンズの収差を補正して空間分解能を飛躍的に向上させる収差補正機に加え,九州大学と日本電子(株)で共同開発した世界最高感度の元素分析X線検出器(Dry SD100GV)を装備しており,材料中に含まれる元素の種類まで識別した原子分解能像を取得することができる。われわれは本装置を用いて,世界最高レベルの磁気特性をもつネオジム磁石において,磁力を飛躍的に向上させるレアアース金属(ジスプロシウムDy)の置換サイトを直接可視化することに成功した1)。最近のネオジム磁石ではナノスケールの極めて限られた領域(粒界近傍)にだけDyを選択的に添加する技術が開発され,200℃程度の使用温度でも磁力低下が起きないように改良されてきているが,実際にどの個所にどれほどのDyを添加できているのかは解明できていなかった。 図1はネオジム磁石の粒界近傍から得たSTEM原子像である。明るいドットがネオジム(Nd)原子位置に対応しており,Nd2Fe14B結晶構造を電子線入射方向に投影した原子配列(原子カラム)によく一致する像が得られている。同一個所を128×128ピクセルに分割し,各ピクセルに細く絞った電子線を照射した際に放出される元素固有のX線(特性X線)を1ピクセル当たり5ms計測することで元素ごとの原子カラム元素マッピング像を取得することに成功した(図2)。これらの中からNd(赤),Dy(緑),Fe(青)の各元素マッピング像をそれぞれ重ねて表示したのが図3である。これより,Dyが粒界近傍の幅3nmほどの極めて狭い領域にだけ選択的に導入できていることが明瞭に理解できる。さらに,Nd2Fe14B結晶中に存在する2種類のNd原子サイトのうち一方の4gサイトだけを優先的に置換することが明らかになった。  このように,ネオジム磁石のような最先端磁石材料について優先的な置換サイトまで区別して元素識別原子像を取得したのは世界初であり,さらに磁力を高める磁石材料開発に貢献するだけでなく,資源を有効利用したさまざまな最先端ナノテク材料の開発にも有用な解析法になるものと期待される。

参考文献

  1. M. Itakura, N. Watanabe, M. Nishida, T. Daio, and S. Matsumura : “Atomic-resolution X-ray energy-dispersive spectroscopy chemical mapping of substitutional Dy atoms in a high-coercivity neodymium magnet,” Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 52, No. 5, pp. 050201-1-4 (2013)
    http://dx.doi.org/10.7567/JJAP.52.050201

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