日本産ハナガサクラゲより耐酸性緑色蛍光タンパク質を開発大阪大学,科学技術振興機構 研究グループ

 大阪大学,科学技術振興機構の研究グループは,鶴岡市立加茂水族館から提供された日本産ハナガサクラゲから,pH4 .5-9 .0の細胞環境で安定して蛍光する,耐酸性の緑色蛍光タンパク質“Gamillus”の開発に成功したと発表した。
 今回同グループは,ハナガサクラゲの光る触手から,蛍光タンパク質をコードする遺伝子を新規に同定し,タンパク質工学を用いて遺伝子改良することで,耐酸性で単量体型,高輝度の緑色蛍光タンパク質Gamillus(Green fluorescent protein with acid-tolerance and monomeric property for illuminating soured environment の略)を開発した。一般によく使われる,緑色蛍光タンパク質EGFP(オワンクラゲ由来)がpH6 .0以下の酸性環境で蛍光を失うのに対して,Gamillus は酸性環境でも安定した蛍光を放ち,細胞内のほぼ全てのpH環境で使用可能である。Gamillus の立体構造をX線結晶解析法で決定したところ,一般的なGFPとは異なるトランス型の蛍光発色団を形成し,この構造が耐酸性メカニズムに寄与することを見い出した。
 酸性細胞小器官は,2016年のノーベル医学・生理学賞受賞者の大隅良典博士が発見したオートファジーなど,多くの生命機能に密接に関わっている。しかし,既存の緑色蛍光タンパク質は,低pHで蛍光しないため,酸性細胞小器官内での使用が限られていた。Gamillusを用いることにより,マクロオートファジーにより蛍光タンパク質が細胞質から酸性細胞小器官へリソソーム輸送される過程を観察することが可能になった。将来的には,既存の耐酸性の青色・赤色蛍光タンパク質と組み合わせることで,複数種のタンパク質を別々の色で標識して,同時に追跡することが可能となる。Gamillus は,酸性環境中の未知の生命現象を発見するための基盤技術となり,医学・創薬研究にも大きく貢献すると期待される。

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